Arc Japan主催ウェビナーを開催 2022年10月27日

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Friday, December 16, 2022

(セミナー中にいただいたご質問への回答は、本ページの最下部に掲載しています。)

株式会社Arc Japanは2021年2月の設立以来、Arcの導入支援、普及を進めて参りました。Arcの国内での広がりに加え、新機能についてご紹介させていただくため、2022年10月27日にzoomウェビナーを開催しました。平日にも関わらず多くの参加者様にご視聴をいただきました。 本イベントではまず初めに、Arc Japan代表取締役の平松宏城から挨拶を差し上げました。 カーボンニュートラルが経営の根幹に関わってくるようになった昨今の状況におけるArcの使命を強調しました。

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続いて、田中徹より、「日本のArcプロジェクトの現状」についてお話しました。事例として近三商事株式会社所有の近三ビルヂングをご紹介し、近三ビルヂングの環境性能の向上に寄与する改修とともに、それらがArcにおいてどのように可視化、スコア化されているかをお伝えしました。また、Arcの登録状況をもとにグローバルでも国内においても着実な広がりを見せていることをご紹介しました。

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続いて、坂本桂太朗より、「Arcの新機能とArcを利用したデータ分析」についてお話させていただきました。 日本語化をはじめ様々な新機能によって、Arcはデータのスコアリングにとどまらず、GRESBやCRREMといった世界で利用されている建物性能標準との比較や分析が可能なことをご紹介しました。また、昨今注目度の高いGRESBにおいてもArcをどのようにご活用いただけるのかをご説明しました。さらに国内46物件をもとにしたデータ分析をご紹介しました。床面積・竣工年とエネルギースコアの関係を分析した結果、小規模・築古ビルの方が良いスコアになる傾向がみられ、築古ビルでも環境認証を取得できる可能性が示されました。

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続いて、Suhaas Mathurより、「Renewable energy in Arc/ Connection of Arc score to LEED」についてご説明しました。Arcでは細かな設定に基づいて再生可能エネルギーの評価をしており、例えばグリットから電力を受け取る場合と、敷地内で再生可能エネルギーを発電している場合とでは異なるメーターを設定することができます。さらに太陽光や風力など再生可能エネルギーの種類を区別して評価することも可能です。100%または一部が再生可能エネルギーの電力プランを契約されている場合にも、Arcに該当する電力プランの排出係数を入力することでより正確に排出量を評価することができます。

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後半のパネルディスカッションでは、パネリストとして株式会社UPDATER(旧:みんな電力株式会社))より間内賢氏、一般社団法人CDP Worldwide-Japanより高瀬香絵氏をお招きし、Arc Japan/ヴォンエルフ代表取締役 平松宏城の3名とDBJアセットマネジメント株式会社の福井幸輝氏がモデレータ―を務め、「不動産価値を高めるトレーサブルな再生可能エネルギー」をテーマにして活発に意見が交わされました。

パネルディスカッションの様子

福井氏:
株式会社UPDATERは、「企業価値を高めるトレーサブルな再生可能エネルギー」として商品展開をされていますが、どういったアプローチで企業価値にアクセスしているのでしょうか?

間内氏:
弊社では「顔の見える電力」をコンセプトに、発電量と需要量を30分ごとにマッチング取引としてブロックチェーンに書き込むことで、調達した電力がいつどこで生産され消費されたのかを証明します。つまり、それぞれの企業や生産者が、なぜお互いをビジネスパートナーとして選ぶのか、その理由が明確になるのです。これは、企業のサステナビリティへの取り組みを可視化することで、ステークホルダーへのアピールとして活用できます。

福井氏:
環境問題への対応は、経営リスクまたはチャンスとしての捉え方はあるのでしょうか?

高瀬氏:
今は世界の金融機関が自分たちの投融資先の排出量を計測している段階ですが、次の段階では投融資先へネットゼロを目指したエンゲージメントが求められるようになります。その時に再生可能エネルギーの導入などすでに取り組みをしていることをアピールすることで、優良企業として高い評価を受けると思います。こういった流れが1、2年のうちに確実に起こるでしょう。Scope3という厳しいルールがあり、企業の排出量の範囲には、所有不動産に限らず建設材や、建設に関わった企業など、バリューチェーン全体がその企業の責任であるとするルールが定められています。どんな小さな企業であれ、バリューチェーンに組み込まれている限りはネットゼロを目指さなくてはならなくなるでしょう。

福井氏:
カーボンクレジットの利用についてはいかがでしょうか?

高瀬氏:
クレジットというのは「途中」だと考えています。基本的にオフセットの「なかったことにする効果」は使用しないルールになりつつあります。グリーン電力証書は「この電気が誰のものであるかの権利を明らかにするもの」なのでオフセットとは異なり、国内のグリーン電力証書はネットゼロに向かう有効な手段として機能しています。

福井氏:
今の不動産業界において、不動産価値を高めていくという観点で事例はありますか?

平松:
ファンドオーナーから、海外、特に規制化がすすんでいるヨーロッパにおいて、新規の不動産を取得する際に本当にこの不動産を買っていいのか確認して欲しい、という問い合わせが増えています。テナント側からも、自分たちがネットゼロを目指す時にこのビルは有利に働くか、という目線での選択が進んでいくんだろうと感じています。

福井氏:
今後の不動産業界について、再生可能エネルギーの在り方への期待お聞かせいただけますでしょうか。

間内氏:
資源価格については、上がることはあっても下がることはないと国際的な機関も結論づけています。今後の不動産業界への期待や課題を申し上げると、1点目に、今後は電力市場価格に左右された電力プランがスタンダートになると予測されるため、電力市場のリスク評価に対して皆様にリテラシーをつけていただく必要性が高まってきているのではないかと思います。2点目に、発電所と長期契約して環境価値を取得するという手法があります。このバーチャルPPAという手法は、再生可能エネルギーの開発を促す追加性を持ち、不動産の付加価値向上に寄与する取り組みができると考えています。

福井氏:
最後にお伝えすることはありますか?

平松:
Arcは見える化の手助け、エネルギー原単位減少に有効な手段です。多くの関係者間でのコミュニケーションツールにもなります。Arcの強みというのは、異なるところに属している人たちの意思疎通を円滑にするものだと信じています。 Arcについて Arcはエビデンスに基づいた検証を提供し、全てのステークホルダーがサステナビリティに関する進捗状況を相互に伝え、マイルストーンを追跡できるようにします。Arcのパフォーマンス・プラットフォームは建物や場所の持続可能性を監督する専門家が、データを収集し、進捗状況を管理・ベンチマークし、影響を測定し、パフォーマンスを向上させることを可能にします。Arcはユーザーがサステナビリティのパフォーマンスを理解し、向上させ、居住者の体験を向上させ、室内環境の空気の質を向上させ、ESGパフォーマンスを報告し、世界をリードするグリーンビルディング認証プログラムであるLEEDの取得を可能にします。プロジェクトはArcを使用して、持続可能性のパフォーマンスを長期的に管理、追跡、改善し、LEED認証に向けて取り組み、認証を最新の状態に保つためにLEEDパフォーマンスを毎年検証することができます。またArcは、ポートフォリオマネージャーが自社の資産、企業、ファンド、ESGパフォーマンスの理解、分析、改善を支援することで、ESGに関するコンプライアンスをサポートします。データをプラットフォームに提出することで、ポートフォリオマネージャーはパフォーマンスが不十分な資産を迅速に特定して改善し、LEED認証要件を満たすために十分なパフォーマンスを発揮している資産を特定することもできます。Arcは持続可能性の主要パフォーマンス指標の追跡にも利用できます。これにはプロジェクトレベル、またはポートフォリオ全体のエネルギー消費量、温室効果ガス排出量、室内環境品質、廃棄物管理、水の消費量などが含まれます。

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以下、いただいたご質問・ご要望への回答をさせていただきます。

■Arcの交通手段評価の説明として、「プロジェクトへのアクセス」という表現はピンとこない。「(Arc)プロジェクト(物理)への通勤手段」としてはどうでしょうか?

 → ありがとうございます。より皆様に理解されやすい翻訳に変更する予定です。

 

■日本においてビルの一部に入居しているテナントがArcを使用している事例はございますでしょうか? 事例がある場合、日本のプロジェクト全体に対して割合はどの程度でしょうか?

 →Arcに登録をいただいている686プロジェクトのうち、interior(テナントでの登録)プロジェクトの峻別はできておりません。ご参考までに、日本におけるLEED認証登録プロジェクトは2022年10月初旬時点で402件、認証済みが214件です。そのうちLEED O+M認証登録プロジェクトは51件、認証済みが27件となります。さらにArcを利用したLEED O+Mv4.1interior認証登録プロジェクトは25件、認証済みは13件ですので、どちらも全体の6%となります。

Published by
Keitaro.Sakamoto